ごきげんよう。六弦A助です。
先月の8/21, 22と中小企業診断士の試験を受験して来ましたので、ここにレポを残しておきたいと思います。
私にとっては初めての資格受験で、かつ初めての国家試験というのもあり、何だか特別な二日間だったように思います。
レポは臨場感を出すために、淡々とした口調で綴ります。
それでは早速参りましょう。
5:30 起床
意外にも目覚めが良く、今日が特別な日だという実感もまだない。
とりあえず朝刊を読んでいつも通りに過ごす。外は快晴。まさにピクニック日和。
弁当を持参することを決意。
7:00 出発
緊張感はまだない。電車の中では事前に用意した自作のまとめシートで知識を定着させる。
このときはまだ知らなかった。試験本番ではこのシートの内容からは一問も出題されないということを。
8:20 試験会場到着
予想以上にすごい人数が集まっている。こんなに受験者がいるのか。
何せ自分の身の回りに同じ資格を目指している人が一人もいないので、初めて見る受験者たちに軽く親近感が芽生える。メタラーがメタラーを発見した時の感じに近いか。
既にコンサルの風格を備えている人もたくさんいる。
それもそのはず。そもそも受験生の中にはコンサル会社や金融機関で働く人も多いと聞く。私のような音楽家はそもそも場違いなのはわかっていた。
ただ、これに受かれば自分は資格の上で彼らと対等に並ぶことができる、と何だか逆にメラメラし始める。
ここへ来てようやく緊張感と実感がわき始める。
9:00 いざ教室へ
いよいよ実際に自分が受験する教室へ入り、受験票に書かれた受験番号と同じ席に座って準備を済ませる。
黒板には「一時間目 経済学・経済政策」と書かれている。
字が微妙に真っ直ぐではなく斜めに書かれていることが気になり始める。
私は昔からこういうのが妙に気になる性分なのだ。まっすぐに書けているかどうか離れて確認するなど、とにかくちゃんと真っ直ぐ書いて欲しい。
気になると言えば、私の斜め隣りにいたシステムエンジニア臭のする男が机上に大量の缶コーヒーやお茶のペットボトル(計10本以上)を文房具などと一緒に所狭しときれいに並べており、「仕入れか?」「まさか全部飲むつもりでいるのか?」などと考えていると、試験官に「試験中は全部カバンにしまってください。ルール違反なので」と朝一で早速注意を受けていた。
この男は試験中、二日間にわたり何度も同じようなことで注意を受けるおっちょこちょいさんだった。
他にも気になる男がいた。
私の前にいる大柄の受験生が頭にポマードを大量に塗りたくっており、それも気になる。
ガッチガチに固めてどんな気合いの入ったリーゼントなのだろうと思えば普通に短髪センター分けで、「なぜその髪型でポマードを選んだのか」「ワックスじゃ駄目だったのか」「ポマードの意義は何処へ」などと妙にあらゆる事がここへ来て気になり始めて軽く錯乱状態になる。
9:50 試験開始
1時限目の科目は経済学・経済政策。
淡々と問題を解いて行き、10問目あたりで悟り始める。
「これは貰ったな」
もともと経済学は一番の得意科目だったことに加え、上級公務員試験の複雑な計算問題にも進出していたので、ある程度何が来ても対応できるようにはしていた。余剰分析の複雑な問題以外は。
ともあれ、1時間目からコケるという最悪のスタートは回避できそうだとニヤニヤが止まらない。
しばらくニヤついていると試験官と目が合い、何だか気まずい雰囲気に。
「毎年いるんだよ、こういう変な受験生」などと思われたに違いない。
ポマードよりはマシだろうと心の中で言い返す。
ちなみに先ほどから私の真隣の席の年配の受験生が何度も深いため息をつきながら解答しているのが気になって仕方がない。
問題用紙のページをめくる速度も遅かったので、一つの問題にだいぶ悩まされているようだった。
「とりあえず難しい問題は飛ばして次へ行きましょう先輩」とテレパシーを送り続けたのだが、ため息は増すばかりのようだった。
11:30 2時限目開始
最も警戒していた財務・会計が始まる。
個人的に今年は難化するのではと予想していたので、複雑な問題ばかりを中心に勉強していたのだが、実際出てきた問題はどれも基本的な問題ばかり。
だが、できない。何故ならこの一年間応用問題ばかりに集中し過ぎて基礎的な問題は完全にすっ飛ばしていたからだ。
ある意味、難問が解けるようになって慢心していたのだろう。
勘定科目の売上値引きについての知識を問うもの、インタレスト・カバレッジレシオの計算問題。どれも基本中の基本で、かつ一年前までは当たり前にわかっていた分野。
しかし他科目など覚える分野が多いせいもあり、この一年の間にすっかり頭から抜けてしまっていた。
試験中、今さらこんな初歩的なものが問われるのかという動揺と、もっと丁寧に学ぶべきだったという反省がごっちゃになりながらも、とりあえず最後まで踏ん張った。
これのせいで合格点が取れなかったら一生悔やむだろうと思う反面、こういう失敗経験もまた勉強じゃないかという持ち前のポジティブ・シンキングが交錯するお昼どき。
12:30 昼食
昼食だというのに しん と静まり返る教室内。しんしんと雪が降り積もる深夜の静けさに近い。
これが噂の黙食か。
他の受験生の邪魔にならないように配慮して、皆さん音も立てず、匂いもさせずに昼食を取る。
私はこういうシビアな空気感に弱いので爆笑しそうになるのを必死で堪える。何せ私以外みな、音を立てず、匂いもさせずに小口でパンを食べているのだ。
皆が示し会わせたかのように、同じ意思決定のもと、パンを包む袋を開ける音すら立てず、黙ってしんしんと小口でパンを食べているのだ。
その光景に何度かお茶を噴き出しそうになるのを堪えながら、私もならってしんしんと昼食を召し上がった。
焼肉弁当を持ち込んでいたのは、私だけだった。
13:30 3時限目開始
設問の言語表現が難解で毎年受験生の不興を買っている悪名高い企業経営理論が始まった。
まるで何を問われているのかが分からない、とにかく複雑で難解な文章表現の設問が並ぶこの科目。ただ今年は例年に比べて少しはマシになったかと思えるほど分かりやすく、案外スラスラと解けた。
最近の理論から「両利きの経営」が出題されており、「あー…、これAmazonの欲しいものリストに入れたっきり受験対策に追われてまだ読めてない本だ」と後悔するものの、書評サイトである程度は概要を押さえていたので問題なく解答できた。
ちなみにこの科目から昨年度受験の科目合格者が一名入室して来た。上品な仕上がりの銀フレームが特徴の眼鏡を輝かせ、科目合格者の風格のようなものを備える彼に初年度受験者の視線が集まっているのが分かった。
心なしか銀行マンの匂いも漂わせている彼。
私は何か悔しいので必死で意識しないようにした。ポマードは正直気になっている風だった。
15:40 一日目最終科目
私が最も苦手とする悪しき科目、運営管理が始まる。
この科目は主に製造業や小売業の運営や管理手法について学ぶのだが、小売りはさておき、製造業に関する知識が何度やっても理解できず、一年を通してとにかく悩まされた科目なのだ。
試験対策と割りきってしまうならば安易な暗記にも走れるが、どの科目においても言えることで、私は「診断士を取得したあと」のことについて考えてしまうのだ。だから無能コンサルにならないためにも、ちゃんと地に足のついた知識を得たいと考えてしまうのは潔癖なのだろうか。
試験終了後、運営管理については足切りはないが6割も取れていないという確かな実感はあった。
こうして試験一日目が無事終了する。
二日目はどれも得意科目を残しており、何となく「もしかして科目合格どころか場合によっては受かってしまうかも知れない」などと甘いことを考えながら帰りの電車の中で明日の経営法務の復習をすることに。
すると隣の席の女子大生らしき二人の会話が聞こえてきた。
「さいきん何者かでなければダメって風潮ない? 別に何者でなくてもいいと思わない?」という世知辛い話をしている。
彼女たちのいう「何者か」が「有名人」や「インフルエンサー」を指しているのであれば仰る通り、全くそんなことはないと思う。
しかし、「他の能力は並レベルでも何か得意な武器を持っている人」を指しているのであれば、それを決めるのは自分ではなくて社会なのではないか、なんて考えてしまったがそんな身も蓋もないことは言えない。
何だか悶々とする列車内のできごとだった。
以上、試験一日目のレポでした。
明日は二日目のレポを公開します。